高齢に伴う不眠

人間は、高齢になると老化して心身の機能が低下してきますが、生体リズムにもそれが当てはまります。具体的には、高齢になると、早い時間に眠くなるようになり、朝は、早くから起きるようになります。睡眠中も目覚めることが多くなります。そのために不眠になり、昼間にウトウト眠ってしまう方もおられます。これは非常に一般的に発生する高齢者の不眠現象です。

これらは、生体リズムの働きが弱くなることによって起きるわけですが、生体リズムは、睡眠のリズムだけではなく、自律神経系や内分泌系とも深く関わっていますので、不眠だけ不調におさまらず、他の疾患も併発する場合も多くなります。

しかし、幸いなことに、生体リズムは意図的にある程度活性化することが出来るので、これらの症状を改善することが可能なのです。その方法としては、次のようなものが考えられます。

1.昼間の運動量を増やす。積極的に散歩したり、社会参加することにより、昼間の活動を増加・活性化します。

2.光を積極的に浴びる。散歩は運動に加えて、光を浴びる効果もあるので、両方の効果かを期待できます。また、高照度照明といって、家庭で強い光を浴びる「光療法」を行うことも可能です。ただ単に光を浴びるだけで脳が活性化されるので、身体が動かなくなった方でも行うことができる利点があります。

これらのことを積極的行うと、生体リズムが活性化されますので、昼と夜のメリハリがつき、昼間の覚醒度が上がって夜の睡眠が深くなるという健康的な効果が得られます。そうすれば、生体リズムに関連する疾患が発生する可能性も小さくなり、毎日元気な生活を送ることが可能となるわけです。

このように生体リズムを活性化する方向で対処すれば問題ないのですが、人間誰しも簡単に対処したいと考えるもので、寝られないからと言って、睡眠薬を使う方がおられます。睡眠薬は高齢者には奨められません。若い人と違って、意識がもうろうとしたり、覚醒状態に戻りにくくなったりして、転倒の危険性があるのです。最悪の場合、寝たきり状態にもなりかねません。

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